式辞
本日、ここに、全国肉牛事業協同組合の創立20周年記念式典を挙行するに当たりまして、式辞を申し述べさせていただきます。 最初に、公務ご多忙にもかかわらず、平素、ご指導を賜っております農林水産省、国会議員の先生を始めといたしまして、県知事および中央団体の会長各位にご臨席を賜りましたことを、心より御礼を申し上げる次第でございます。 次に、日頃、組合事業の推進にお力添えをいただいております全国畜産関係団体および金融機関・企業から、大勢の方々にご参列いただいております。 誠にありがとうございます。 さて、私どもの組合は、幾多の試練を経ながらも、多くの方々に支えられて、本日、創立20周年を無事に迎えることができました。 ここに、ご参列いただいております各位、そして、組合の設立にご尽力された先輩諸氏に対して、深く感謝を申し上げる次第であります。 ここで、組合の設立当時の状況を振り返えさせていただきます。 組合が創立されたのは平成元年でございまして、まさに、牛肉の輸入自由化を3年後に控えた維新前夜を迎えるような年でありました。 皆様もご承知のとおり、当時は、マスコミの報道などを背景に、国内の肉用牛生産が壊滅的な打撃を被るのではないかと、全国の肉用牛生産者が先行き不安に陥っている状況にありました。 そして、肉用牛生産の歴史が始まって以来の難局を乗り越えるため、全国の意欲的な肉用牛生産者が結集して、組合創立の1年前に「全国肉用牛経営者安定会議」を設立し、これを母体として、平成元年、農林水産大臣から認可をいただいて、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合を組合員150人で設立し、平成3年の牛肉の輸入自由化を迎えることになったのです。 当時、政府は、牛肉の輸入自由化に対処するため、肉用牛生産振興に係る新しい制度および補助・資金対策を次々と構築されました。 このような政府の手厚い対策の下で、新設された組合は、組合員の肉用牛生産の安定化を支援するため、関税割当制度による肥育素牛の導入および単体トウモロコシの供給対策を組合事業の柱として推進しました。 なお、これらの対策は、その後、肉用牛生産者のモデルとなる自家配合飼料の活用による大規模肥育経営を全国に展開する大きな要因になったものと考えております。 その後、肉用牛生産を震撼させた大事件として、今でも忘れることができないのが、平成13年のBSE発生がございます。 当時、全国の生産者が、これで日本の肉用牛生産が崩壊するのではないかと覚悟したほど、深刻な状況を経験したのですが、これも、政府の手厚いBSE対策により、おかげをもちまして、何とか切り抜けることができました。 これら紆余曲折を経て、組合員は、牛肉の国際競争を念頭に置いて、肉用牛の経営規模を拡大してまいりますが、経営の合理化・効率化を促進するとともに、低廉な、肥育素牛を多頭数確保するため、繁殖肥育一貫経営および乳肉一貫経営の実現に取り組みを開始し、現在では、日本を代表する大規模経営が数多く実現しております。 このように、経営規模が拡大して参りますと、当然、潤沢な経営資金と低廉な配合飼料などの生産資材の確保が必要になってまいります。 当組合は、このような組合員の要請に応えるため、新しい事業の創設を行っております。 具体的な事例を二つご紹介します。 一つは、金融機関との調整を経て、平成16年、国内では初めての肥育牛を担保とした「所謂」動産担保融資を創設しました。 なお、これを事業化したことにより、多くの金融機関がビジネスチャンスとしてとらえ、広く農業分野において動産担保融資が展開されるようになりました。 二つは、配合飼料メーカーの連携により、平成17年、割安な組合ブランド配合飼料の共同購買事業を立ち上げたことです。 この事業は、組合員に対してのみならず、地域の配合飼料価格にも影響を与え、全国各地で肉用牛生産コストの低減に寄与しております。 当組合は、これまで、農林水産省を始め、関係各位のご指導、ご支援をいただきながら、只今ご紹介しましたような各種の事業推進に取り組んでまいりました。 おかげさまで、現在、組合員数は、580名と大幅に増加しており、組合員が飼養している肉用牛頭数は、全国の肥育牛飼養頭数の1/3を占めるに至っております。 それだけに、当組合は、安全・安心な国産牛肉を消費者に安定的に提供するという役割が大きくなっており、我が国の肉用牛生産振興に果たすべき責任の重さを痛感しているところであります。 最近、ご承知のとおり、世界的なバイオエタノール需要の拡大および原油の高騰の長期化により、飼料用穀物輸入価格の高騰が続き、肉用牛肥育経営の重要な生産資材である配合飼料価格が断続的に値上がりして価格の高騰が長期化しております。 また、国内の景気の動向および食料品等の値上がりを反映して、牛肉消費は鈍化傾向にあるため、国産牛肉の相場が低迷しております。 このため、現在、肉用牛生産者は、牛肉の輸入自由化、BSEの発生時を上回る自助努力の限界を超えた経営危機を迎えておりますが、農林水産省をはじめとしまして、国会議員の先生および関係機関・団体各位のご指導、ご支援を得て、これまでと同様に、早期にこの経営危機を乗り越えて、組合の果たすべき役割を全うしたいと考えております。 最後に、本日の創立20周年記念を契機としまして、心を新たにして、肉用牛の生産振興をつうじて、地域農業の振興に貢献するとともに、消費者に信頼される国産牛肉の提供に努めてまいる所存にございますので、本日、ご臨席いただいた各位におかれましては、末永くご指導、ご支援を賜りますことを、切に、お願いを申し上げて式辞とさせていただきます。 |
平成20年5月29日 |
全国肉牛事業協同組合 理事長 山氏 徹 |